ラスコー展の見どころ

1.隠れた線刻がライトで浮かび上がります
「身廊」の壁画群は、彩色と線刻の2つの技法が組み合わされて見事に描かれています。これは他の洞窟内部には見られない特徴であり、線刻には絵を際立たせる効果があります。

2.いくつもの謎に満ちた洞窟壁画
謎の記号や不可解な「井戸の場面」。洞窟で発見された動物骨の90%はトナカイですが、そのトナカイは1頭しか、そして当時いたはずのマンモスは1頭も描かれていません。

3.動物を躍動的に見せる技
重ねられ、連続して描かれた動物たち。非現実的なサイズ感や色彩の豊かさ、生き生きとした表現。工夫が凝らされた描き方にご注目ください

洞窟壁画の最高傑作を間近で体感!

現在は保全のために研究者ですら入ることを許されないラスコー洞窟。本展では、この閉ざされた洞窟の中でも傑作が並び特徴的な技法で描かれた「身廊しんろう」の壁画群と、最も謎に包まれた「井戸の場面」の絵が再現されます。これらの壁画は数あるラスコー洞窟の壁画の中でも彩色のみならず、線刻ならではの繊細な表現が際立ちます。巨大なウシや、小走り、いななくといった躍動感あふれるウマの姿が見事に表された重要な場面です。本展では、3次元レーザースキャンなど現代の最新技術と、アーティストらが膨大な時間をかけ、手作業で精密に復元された迫力満点の壁画が、来館者の前に実物大でよみがえります。ご覧頂ければ、クロマニョン人に対するイメージが変わるでしょう。

2メートルの巨大な「黒い牝ウシ」が出現!! (実物大で再現)

約2mの黒い牝ウシは、教会建築用語の「身廊」と名づけられた壁画群の中で最も存在感があります。約20頭のウマの列が重ねられて描かれ、ウシの足元には不思議な記号が配置されています。

「黒い牝ウシ」© SPL Lascaux international exhibition

春に描かれた「背中合わせのバイソン」(実物大で再現)


「背中合わせのバイソン」© SPL Lascaux international exhibition

2頭のオスのバイソン(野牛)が交差し、交わる尻の部分は、濃淡をつけて立体的に見せる技法が使われています。バイソンの体の一部が赤いのは、冬から春になると起こる毛色の変化を表しています。

槍が刺さった「褐色のバイソン」(実物大で再現)


「褐色のバイソン」© SPL Lascaux international exhibition

ウマとバイソンの全身の姿が躍動的に表現され、毛並みや蹄まで丁寧に描かれています。よく見ると、バイソンの体に槍を思わせる長い直線が刻まれていますが、動物たちは痛そうに見えません。

ハシゴを登って描いた?「泳ぐシカ」(実物大で再現)


「泳ぐシカ」© SPL Lascaux international exhibition

角が立派なシカの頭が並ぶ様子は、群れで川を泳いで渡っているように見えます。地面から約2mの壁の高い位置にあり、ハシゴを使って描いたという説もあります。

トリ人間 !? 謎に満ちた「井戸の場面」(実物大で再現)

ラスコー洞窟で最も深い位置、深さ5mのたて穴を降りた広間に、倒れた“トリ人間”を含む奇妙な場面が描かれています。クロマニョン人の壁画で、物語を感じさせる壁画の表現は非常に珍しく、そしてこの場面の意味は不可解です。またこの部屋では、精巧につくられたランプや多数のトナカイ角製の槍が発見されており、その神秘性を増しています。

「井戸の場面」© SPL Lascaux international exhibition

芸術のはじまりを知る!

原人や旧人などの古代型人類が、芸術を生み発展させた証拠はありません。ヨーロッパでは、4万5000年以上前のネアンデルタール人(旧人)の文化に芸術的要素は見当たりませんが、クロマニョン人が現れると状況が一変しました。この変化を実感して頂くために、本展では、フランスの2つの国立博物館が所蔵する逸品の数々を、特別出品します。壁画だけではない、クロマニョン人の文化の奥深さに触れ、その技術・繊細さ・造形のユニークさをお楽しみください。合わせて、彼らがラスコー洞窟の暗闇を照らすために使った、国宝級のランプをご覧頂きます。

美しい毛並みが表現されたバイソン


《体をなめるバイソン》ラ・マドレーヌ岩陰遺跡(フランス)出土、マドレーヌ文化(約2万年から1万4500年前)、トナカイ角製、10.4×6.9×2.3cm フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵[フランス国立先史博物館(レゼジー)寄託]Photo © RMN-Grand Palais (musée de la Préhistoire des Eyzies) / Franck Raux

動物の仕草がみてとれる自然主義的な作品で、旧石器時代彫刻として最も有名な傑作の1つです。バイソンは振り返り、頭をやや上げ、舌を出し、体をなめています。長い毛、細かな毛などの毛並み、小さな耳、大きな目、鼻や口が繊細な線で刻まれています。氷河期のヨーロッパに数多くいたトナカイの角から作られました。

暗闇を制したクロマニョン人「ラスコーのランプ」

人類は100万年以上前から火を使っていたと考えられていますが、灯りとしての火を持ち運んだ物的証拠は、クロマニョン人のものが最古です。彼らは洞窟の暗闇を照らして奥へ入り、そこに壁画を描くために石製のランプを使いました。皿状のくぼんだ面に動物の脂をおいて火をつけるもので、ヨーロッパの洞窟壁画から多数見つかっています。その多くは粗雑なつくりですが、ラスコー洞窟で発見されたこのランプは、例外的に丁寧につくり込まれていることで有名です。

優美な姿のウマの彫像

美しいフォルムと念入りな細部表現が見事なウマの彫刻です。刻線によって毛並みやたてがみに加え、毛色の境界線も描き分けられています。

「ヴィーナス」と呼ばれる小立像

丸みのある成熟した女性を表した旧石器時代ヴィーナスの一つです。この時期にはヨーロッパ各地で、このような胸や尻が大きく誇張された女性像が制作されました。

ネコ科動物!?が彫られた投槍器

槍投げの補助具に装飾された美しい動物彫刻です。筋骨たくましい前半身や大きな耳に特徴がありますが、動物を特定するのは難しくハイエナなど諸説あります。

世界初公開洞窟に残された画材と道具

クロマニョン人の壁画制作には、絵の具を使う彩色と、彫刻刀のような石器で線を彫り込む線刻という、2つの技法が使われています。絵の具の彩色には指を使うほか、動物の毛などの筆、スタンプ、吹きつけなどの技法が存在したと考えられます。

ラスコー洞窟から出土した顔料(絵の具)

これらの顔料は、ラスコー洞窟から発見されました。精製した黄土(オーカー)で、明るい黄色、赤、琥珀色まで様々な色があります。

ラスコー洞窟から出土した石器(彫器)

彫刻刀のようなこの石器には刃が摩滅しているものがあり、ラスコーの壁画の線刻画に使われたと考えられます。

クロマニョン人の正体を解き明かす!

2万年前の人類と聞けば、動物を追いかけて暮らす素朴な“原始人”をイメージされるかもしれません。しかし本当のクロマニョン人は、現代の私たちをも感動させるような芸術を生み出す存在であったことは、彼らの残した洞窟壁画や遺物からも分かります。ではそんな彼らはいったい誰で、どこからやって来たのでしょうか? 本展では最新科学の知見に基づき、クロマニョン人の正体に迫ります。

アフリカからやってきた

近年の研究から、ホモ・サピエンスはアフリカで進化し、5万年前以降に世界中へ大拡散したことがわかってきました。クロマニョン人は、その中でヨーロッパへやってきた集団です。つまり、彼らはアフリカからやってきた移民だったのです。

クロマニョン人に会える!

古代人類の復元を専門とする芸術家が、研究上の解釈に基づき等身大で制作しました。

A. 高度な裁縫技術
クロマニョン人がいた時代の中頃に、糸を通す穴を開けた骨製の縫い針が登場しました。これによって、より機能的な衣服が作れるようになったに違いありません。

B. 豊富なアクセサリー
クロマニョン人の遺跡からは、貝殻・動物の歯・象牙製のビーズやペンダントなどのアクセサリー類が大量に見つかっています。

C. ボディ・ペインティング?
確実な証拠はありませんが、人物像にボディ・ペインティングらしき表現がみつかることもあります。装飾と壁画の文化を持っていた彼らなら、彼らなら、ボディ・ペインティングをしていても不思議はありません。

D. 貝殻のビーズをつけた頭飾り
クロマニョン人の女性像に表現されていることや、一部の埋葬人骨に残っていたことから、このような飾りがあったことがわかります。

E. 多彩な狩猟具
クロマニョン人は、石や角を利用して様々な種類の槍先をつくりました。このような狩猟具の多様化は、ネアンデルタール人の文化には見られないものでした。

F. 現代人と変わらぬ顔つきと姿
骨をみればクロマニョン人が現代人と同様の姿をしていたことがわかります。ここにいる3体の大人は、実際に見つかっている化石骨をもとに復元されています。

G. 毛皮の加工
クロマニョン人の石器には皮革加工の専用具のようなものがあり、彼らが動物の皮を積極的に利用していたことがわかります。